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練吉は永い間黙つていた。それから、いかにもいやいやな調子で、
冬近い冴えた日ざしが午過ひるすぎの河原町の長い、だが人気のない通り一杯に溢れていた。一体みんな何をしているんだらう、まさか軒並みに夜逃げしたわけでもあるまいのに、と呟つぶやきたくなるほど人の子一人いなかつた。そして、冴えているがしだいに温ぬくもりの増して来る日は、何だかのうのうと、つまり誰もいないので日そのものが路一杯にひろがつて日向ひなたぼつこをしているみたいであつた。
徳次は明かに房一にくれようと思つていたらしかつた。で、間が悪さうにそこに立ちはだかつたまゝ、あのきよろりとした目でしきりに練吉と房一を見くらべていた。
「え?いや、居ましたよ、居ましたけど、別に――」
「すると、何ですか、十年契約といふやうなことにでもなすつたんですか」
「いや」と、喜作は相変らずきつぱりと、煩うるさがりもせず答へた。
と、練吉は急いで云つた。
房一が声をかけて回転椅子を押しやると、
「さうか。うちの方では山車だしを引いて出るさうだ。それから、みんな紋付に羽織袴といふことだの」
義母は明日も片づけ仕事が残つているので泊つて行くことになつた。
「さうですよ、ですが、何年ぶりでせう。これがもつと他の所だつたらおたがひ気がつかなかつたかもしれませんよ」
この云ひ分はいつでも何かあるごとに、練吉の口に上つた。正文の前でも云つた。何年かの間繰り返された練吉の云ひ分だづた。